1961.6.5(月) 紛失した学生証も気になるが・・・
登校してすぐ学生証、紛失届けを出した所、再交付は一週間後だと言う。 がっかりしてすっかり諦めかけて居たが、昼休みに掲示を見ると呼び出しが出ている。 これはと思い行ってみると受付の遺失物係からで、神保町の菊三べーかりーから学生証の忘れ物があると言う通知が有ったと言う。 それこそ欣喜雀躍して、三時限の終了後出かけていき、店の女の人から受け取ったが、店の椅子の上に置き忘れてあったと言う。 勿論、僕は此処数ヶ月、神田へ来たことはなし、全くおかしい。
恐らく、最初に拾った人が、何かを当てにして持ってきたが、目ぼしい物がないので無いのでそのまま置き捨てていったのであろう。 それはともかく、無事にしかもこんなに早く出てきたのは実に運がよかったと言うほかない。
(注: この時こんなに喜んだのは、とにかく定期代が心配だったからだ。1年後に本郷の教室で盗まれた時などは、偽東大生の詐欺行為に悪用され、警視庁捜査二課の刑事が2名下宿先に遣ってきて目黒署まで任意同行を求められた程だから、この時拾得した人が、その道のプロで東大生の学生証の悪用価値を知っていたらこう簡単には済まなかったろう。)
昼休み、例によって杉山、大竹、黒川らと食堂の方へ行ったところ、プールの方から何と、Stu. と Par. が仲良く一緒にやって来るではないか。 大竹もすぐそれに気付き二人で杉山に注意した所、ふんふんと言っているので了解したものとばかり思っていたら、ああ、あれは、とばかり驚き、かつ、しきりに残念がるので、大竹と共に大笑いしてしまった。 まったく杉山も迂闊なことであった。
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食堂からアーケードを見て105番へ引揚げる途中(勿論皆一緒に)、やはり同じところでMKさんに行き合った。 全くあの人だけは別で、その時ばかりは、S. やP. に会った時には少しも感じないような恥ずかしさや引け目を感じるから不思議と言えば不思議である。 恐らく MK さんの方でも、僕と杉山の二人に面と向かっては随分居心地が悪かったろうと思う。
(注: 学生証の一件が落着し、経済的苦境から脱することが出来た途端、女子学生を巡る噂雀の一羽に成り下がるような状態では、 "meditation" や "ZEN" を志してはいても "Pity's akin to love" の世界への執着を捨てきれる筈はなかった。)
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