2013年11月12日火曜日

1962.6.26(火) 心憎き泥棒・・専門書の相場に明るい?

11時20分頃、21番教室の前にカバンを置いて手洗いに行ってくると、影も形もない。 或は誰かが忘れ物だと思って、何処かへ届けてくれたのかと思い、使丁室や事務室に行って見たがどこにもない。 どうも盗まれたらしい。 ドッソウの本や小西に返そうと思っていた近経講座の一巻、それに英語の辞書と現金千円、さらに学生証や定期、クリーニングの預り証まで全部盗まれてしまった。

小西でも居たら相談しようと思ったが、こういう時に限って現れない。 結局、ゼミの始まる前になって一緒になり、彼に付き合ってもらってハンコを買い、一通り、届けを出してきた。 僕が学生部へ行ってくる間に、彼が経済学部の使丁室へ寄り、カバンを持ってきてくれていた。 何でも18番の隣の教室に有ったそうである。 中を調べてみると、千円と学生証、定期、それにドッソウのLPだけが無くなっていた。 大石先生に「盗難品はどうしました」と聞かれ、リニプロだけ盗まれたと答えたところ、一同大笑い、まったく心憎い泥棒であったという次第。 ゼミは、殆んど教科書はやらず、雑談に終わった。

帰りに、小西と御茶ノ水で食事をし、さらに、"シェーン"でコーヒーを飲み、下宿に同行、初めて僕の部屋に案内した。 談論風発止まるところを知らず、10時10分頃になって漸く送り出した。 預かった荷物は4日の午前8時半に八重洲中央改札口に届けることになった。

(注: トイレに行っている間にカバンを盗まれ、めぼしい物だけ抜き取られていたと言う顛末である。 現金千円は今で言えば1万円相当か? 定期券は換金できるから盗まれて当然。 しかし、学生証に思いがけない価値があったことは後になって分かった。 それ以上に感心したのは、書き込みだらけの教科書が無くなっていたことである。 ドッソウとかリニプロだとかLPだとかいうのはその教科書 "Linear Programming and Economic Analysis (Dorfman, Samuelson, & Solow, 1958)" のことである。 ドッソウ(Dossow?) とは共著者3人の名前を合成した通称である。 この盗難本も後日、古本屋で見つかったのだが、その顛末はいずれ日記に出てくるはずだ。)

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